『世界大戦』
画像抽出:DALL・E2
いわゆるコロナショック時に納得のいくトレードが出来なかったのだが、その理由として曲がりなりにも投資活動を行う上で「心の準備と行動の想定」が出来ていなかったと反省した。
世界的パンデミックという状況に圧倒されて思考停止に陥り、下落していきそうな株価を前に打診的な売りポジすらも持てなかった。情けない話だ。
そうした反省から、思いつく限りの状況に対して想定をしておく事にした。
中国の台湾進攻、ハイパーインフレ、パンデミックに続く「投資想定」シリーズの第4回目は第三次世界大戦だ。
これは問答無用で考えたくもない状況の最たるものである。子を持つ親としては特にそう思う。
ただし、曲がりなりにも投資活動をしているのであればそういう感情は一旦横に置き、想定できる全ての状況に備えるべきである、というのが投資想定シリーズなどといいながらチマチマとそういった際の身の振り方を書き連ねている動機だ。
なお、これまでのシリーズの投稿と同じく対象となる出来事の細部には踏み込めない。それはまだ起こっていないので当然ながら細かい事は判りようがない。
第三次大戦といったってその時どの国の経済がどういう状況だとかどこが戦場になるか等、いざ実際に始まってみないと判りようが無い事には触れられない。
そのため出来ることは前例や類似する出来事を例としてザックリと取り上げ、その対処法を想定していくといった程度にとどまる。
つまりはこれまでに起こった戦争中、それから特に第二次大戦中の相場の状況を取り上げる。
第二次世界大戦中の日本の株価
日経平均株価の算出、公表は1950年から始まったらしく、当時の具体的な価格情報は見つけられなかった。
ネットで散見されるのは「東京株式取引所株価大指数」なるもので、1921年1月を100ポイントとしてそこからポイントで測るチャートだ。
満州事変があった1931年から1941年、そこから1945年までは1931年が約50ポイント、太平洋戦争が勃発した1941年が150ポイント、終戦の年である1945年が200ポイント程度だ。
乱高下を繰り返しながらも上げている。ただこれは物不足によるインフレで上がったそうだが、それにしても以外だった。
東京大空襲後の写真などを見たことがあるが、あれほど国が壊されたら株価もへったくれもないほどの大暴落だっただろうと勝手に思い込んでいたから。
ただよく調べてみると、「戦時金融公庫」という政府系金融機関が無制限の買い支えを行っていたらしい。それに終戦直前頃にはこの機関のみならず取引所までが株式の買取を直接行うようになり、株式市場は事実上凍結されたような状態だったとの事だ。
その後に終戦を迎えると、株価は一旦150ポイントを切った後にそこから数年にわたり急騰している。
急騰の理由はズバリ、ハイパーインフレ(国際会計基準:3年間で累積100%の物価上昇)だ。戦争で社会インフラと生産設備が破壊され需給バランスが崩れ、完全な供給不足となり価格が上昇した。
その上で日本は国債の返済が不可能となったらしく、このページでも書いた通り「預金封鎖」、「新円切替」、「財産税」の徴収を政府が行い、円の価値を大幅に下げることで実質的な債務を無くそうと試みたそうである。
同じ敗戦国のドイツでも似たような状況が起こったらしい。
終戦後はビットコインのチャートのような急騰を見せている。
米国の株価
一方、米国(やイギリス)の株取引は戦時中もいつも通りに行われていたらしい。
これに関しては日本等と違いまず余裕があったこと、そしてなるべく正常に経済を回し続けることの重要性を理解していたからだといった意見をいくつか目にした。
なお米株の推移としては1939年(ドイツのポーランド侵攻)から1942年にかけては155ドルから92ドル程度まで落ち込んでいる。つまり約40%の暴落だ。
ただし、そこをボトムに1945年には160ドルを超えるという逆三角形のような形のチャートとなっている。
ダウ工業株30種平均(DJIA)の月次値 1920-1955
(参照:www.statista.com)
ダウ平均株価
(参照:wikipedia)
1942年までは世界情勢不安に慄いていたが勝利という終わりが見えてきたと察して投資家が買い出した、といった所か。戦後の需要も見越しつつ。
注目すべきは戦争での勝利を待ってから上げるのではなく、戦局の流れが変わったところで底打ちしたという部分だろう(コロナ・パンデミックでピークアウトを期待して株価が上がり出したのと似ている)。
つまるところ世界大戦、世界同時多発的に戦争が起こるとやはり株価は下げやすいと言える。
だが為替などのようなメチャクチャな動きはしておらず、だからバフェット氏は大きな戦争中は株を推奨しているのだろうと納得した。
戦時中における投資の基本
このページで少し前述したのみならず「中国による台湾進攻が起きた際の投資先を想定してみた」でも書いたが、大きな戦争中は現金の価値が下がりやすいので現金より株式などにして持っていた方が良い、とウォーレン・バフェット氏は考えている。金やビットコインも現金と同じく下げやすいので株式一択との事である。
とはいえ分散投資も重要だろう。これは戦時中に限らず常時当てはまることだろうが、国、通貨、ジャンルまで分ける。米ドル建てとユーロ建て、米国株と日本株、株と国債とコモディティー、といった具合だ。
という事で、株式一択にするか分散投資かは考えどころだが、個人的には株式(SPX500のETF等)をメインとしつつも国債やコモディティー、クリプト等もある程度は保有する、分散比率を株式に偏らせた分散投資を行うと思う。
第三次世界大戦の主要参加国
日本を含めた西側諸国内で活動しニュース等を見聞きしている限り、もし世界規模の戦争が次に起こるとしたら対立軸は民主主義 vs 権威主義なのではないかと思わされる。民主主義は西側諸国、権威主義とはロシア、中国、北朝鮮。
ただこれではあまりにもそのまま過ぎると言うか、そんな大半の人間が簡単に予想できそうな状況には実際にはならないのが世の常だろう。
とは思うが第三次大戦が起こるとすればその対立軸しか思いつかないので、とりあえずはこの安易な予想に沿って想定するしかない。
…核を保有する米中露間の戦争など想像するだけで恐ろしいが。
軍需産業
これまた「中国による台湾進攻が起きた際の投資先を想定してみた」の内容と被るが、米国のロッキードマーチン(LMT)、ノースロップ・グラマン(NOC)、レイセオン・テクノロジーズ(RTX)、ゼネラル・ダイナミクス(GD)、ボーイング(BA)、等、日本の三菱重工(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)、韓国だとハンファ(Hanwha)やヒュンダイ(現代)といった軍需企業は利益を伸ばすと予想される。
コロナ禍に製薬会社株が上昇したのと同じ理屈だ(医薬・製薬メーカーの株価推移は「iシェアーズ グローバル・ヘルスケア ETF」(IXJ)の2020年からの株価参照)。
ただ軍需産業への投資は、それを疑問視する人も少なからずいるだろう。正直言って自分もそれはいかがなものかと感じる。
戦争特需
その国の近くで戦争が起きるとその国は儲かる、というのが通説となっている。朝鮮戦争時の日本が良い例だ。
つまりは株を買うとしたら、戦争をしている国の近隣である程度の経済規模がある国を対象とすべき、という事になる。
どこが戦場になるかなど今から判るわけは無いが、火の手が上がりそうな国の周辺国の中から絞っていく、というのはかなり分かり易い。
戦争中の地域
ジム・ロジャーズ氏は戦争中の地域に投資をすると良いと提唱する。
つまりは逆張りをするという意味だ。
戦争で焼野原となった後は再建・成長しかないだろうことは想像が付くが、これには投資タイミングがかなり重要になってきそうだ。つまりは戦争が終わりそうなタイミングでの投資が望まれる。
戦争地域になりそうな場所
細部には踏み込めないと前述したがそれでは実際の感じが想像し辛いので、1つのモデルケースとして無理やり地域を絞ってみたい。これは想定とも呼べないただの妄想レベルの話だ、という点は断っておく。
まず、民主主義 vs 権威主義という対立軸になるとすればそれは米英仏 vs 中露(+北朝鮮)という構図になるのではないか。それが例えG7 vs BRICSであったとしても大将というか、各陣営の主要国は変わらず米英仏 vs 中露だろう。
アメリカ本土が戦場となる状況はちょっと想像がし辛い。というのもその前に世界各地に米国の軍事拠点があり、それらが機能している限り本土に攻めこまれるという状況は考え難い。
そうなると英、仏、中、露、そして米国の軍事拠点が戦場となる可能性がある。
そう考えるとそれらに加えてロシアと英仏の間にある各国、中国により近い米国軍事拠点と言える東アジアや東南アジア諸国が危ない。
当然ながら日本もこれに含まれるが、危ないという事は戦火に見舞われずに戦争周辺国になる可能性もあるという事だ。
それにしても実際に起こるとはどうしても思い難い話ではある。
まとめ
世界大戦は後になってそう名付けられるのであって、当時はそれが第○次世界大戦だと思っている人はいなかったとの事である。
例えば2023年現在進行中のロシアーウクライナ戦争とイスラエルーハマス紛争も、何かのはずみで欧州や中東を巻き込んで拡大していった場合、後世に世界大戦と呼ばれる規模まで大きくなっていってしまう可能性はゼロではない。
反戦のために出来ることは個人的に何でもしたいと思うが、一方で投資家の端くれとして、上記の想定と精神的準備は行っておきたい。
良し悪しは別として、投資とはそういう側面のある活動であるというのは事実だ。