『スイス国旗』
画像抽出:DALL・E2
安全通貨:
“安全通貨は市場の不安定さや経済の不確実性が高まる際に、価値を維持または上昇させる通貨”。
(出典:dailyfx.com)
dailyfx.comは続けて「経済状況や政治的安定性に信頼され、資産を保護する「避難所」として機能するでしょう。」とのこと。
かつては日本円もそう呼ばれていた「安全通貨」。2024年現在はスイスフランと米ドルがそれにあたる。特にスイスフラン(CHF)は安全通貨の代名詞的な存在だ。
そして今も進行する円安トレンドに入る前から持っておけば(円を変えておけば)良かった法定通貨ナンバーワンである。
今更後悔してもどうにもならないが、せめて同じような間違いを今後しないためのささやかな対策として、スイス・フランについて少し調べておきたい。
安全通貨の条件
フランを安心して持っていられる理由としてスイスの経済が強いこと、戦争に参加しなさそうなこと、侵略されなさそうなことなどが思いつくが、そもそも安全通貨と呼ばれるための条件とは何かについて調べてみた。
ロイターのこの記事(https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2Z502Q/)によると、
・経常収支
・対外純資産
が重要だとのこと。
では経常黒字をキープしつつ世界最大レベルの対外純資産国である日本がなぜその座からずり落ちたのかというと、対GDP(国内総生産)比でみた経常黒字の悪化が原因だとしている。
日本の対GDP比経常収支は2021年3.9%から2022年2.1%。スイスは2021年7.9%から2022年9.8%。日本が半減している間にスイスは増加させている。
つまりは経済的国力が衰えてきているか反対に増しているか、ということになる。
日本の経常収支の悪化は貿易赤字の拡大が原因。貿易赤字は円安に作用する、と上記の記事では説明している。
リッチで安定した国の通貨だから安全、というザックリとした印象をバックアップするような内容の話だ。
なおスイスの政策金利は1.5%。5.25~5.5%程度のアメリカのドルよりフランが強い説明に金利差は含められない。
個人的な経験
2013年と2017年に友人を訪れつつ旅行もする目的でスイスを訪れた。
今にして思えば日本の物価と比べて10年前はちょっと高いな程度、7年前は2倍程度に感じた。最近は行っていないので体感としてではないが、察するに2024年現在は3~4倍以上に感じるのではないか。
日本とスイスの違い、それは世界経済についていっているか取り残されたかだ。いや、スイスの場合は物価でいえば牽引していると言える。
Baselで働いているスイス人の友人はドイツやイギリス、フランスでは働きたくないと言っていた。賃金が安いから。
並みいる先進国を下に見る経済力…スイス恐るべし、とやけに印象に残った。
スイスフランショック
個人的な話をもう一つ付け加えると、2015年1月15日のスイスフランショックは、2013年からFXを始めた自分にとってはほとんど最初の○○ショックだった。
割と短い時間足でスキャ的なトレードがメインだった時期で、そこへとんでもない大変動が来たわけだから驚いたなんてものではなかった。
その日もMT4でトレード出来そうな通貨ペアを幾つか選らんでいて、EURCHFペアはその1つだった。
ショートのタイミングを見計らっていたこともあって千載一遇のチャンスを逃したと後悔しきりだった。
ただ同時に、FXの怖さをはっきりと思い知った瞬間でもあった。
EURをロングしている可能性だって普通にあった訳で、そうであったなら瞬殺されていた。
トレードの際は損切ラインを必ず入れること、そして0カットシステムを採用している業者だけに限り口座を持つこと。更にはその業者が信託保全をしているというのも必須条件に入る。
これら3点はFXをする上で当たり前に揃えておかなければならない環境で、知らなかったでは済まされない話だ…という事をスイスフランショックを機に自分に叩き込むことが出来た。
何にせよ、あれだけのデカいショックで被害を被らなかったことに感謝するしかない。爆益を逃したと後悔するよりも。
スイスフランはいつから安全通貨か
スイスフランの歴史について少し調べてみると、安全通貨としての歴史は100年を超すことが判る。
1914年からの第一次世界大戦時、1939年~の第二次世界大戦時にもスイスフランは安定を維持したらしい。
1971年のニクソンショック(米ドルと金との交換停止)でも、スイスフランは金本位制を維持し「安全通貨」としての地位を完全に確立。
1973年に金本位制が完全廃止され安定性を失った為替相場だが、同年1月末に固定相場制から離脱したスイスフランへの投資ブームが起きたらしい。
近年のリーマンショック、コロナショックなどでもスイスフランは買われた。
ちなみにスイスがフランを導入したのは1848年。
(参照:swissinfo.ch)
Safe currencyとしての威風堂々というか、超えてきた荒波が凄すぎる。ここ最近ポッと出てきたような日本円なんぞにはその地位は譲れない、といった雰囲気である。
この通貨であれば、例え第三次大戦が起こっても金融危機が再び来ても任せておけるような風格を感じる。
であれば預け先の金融機関もスイス国内に持ちたい、とだから富裕層は思うのだろう。
日本円の今後
日本もスイスやオーストリア、あるいはトルクメニスタンの様に永世中立国になってしまえば良いのに、と簡単には言えないのは理解している。
他国の戦争に関与しないのだから軍事同盟もあり得ないので非武装国家などと言っていられなくなり、ガチで自衛する必要がでてくるからだ。
自衛と称して本気で武装しなければならなくなり、スイスやオーストリア、トルクメニスタンのように徴兵制を(再び)敷くような事態とセットで考えなければならない事柄だろう。
それが良いとか悪いといった話ではなく、他国の事例から単純に推察されうることとして。
ただスイスフランレベルの信用を世界から得たかったら、他国に軍事的に依存している国の通貨では不可能なことは明らかだ。
言うまでもなく通貨の価値はそれだけでは決まらない。多岐にわたる事柄が複雑に絡み合って為替は動いている。
でも安全・信頼を主として通貨を考えた時にはその国家の独立性は必須な気がする。
ちょうど親を頼った実家住みの人間より独立し家庭を築いている人間の方が他人から信頼を得やすいように。
実際のところどうかという話ではなく、ぱっと見ではそう見えるというのが重要なように思う。
いずれにせよ揺るぎない信頼を得るためにはその真価を長い歴史に証明してもらう必要があり、だからスイスフランは日本円のずっと先を走っている感は否めない。
…といった事等も含めて、長期的には主要通貨に対して円安が続いていくと個人的には考えている。
数年程度の円高局面が今後あったとしても、それよりも長いスパンでの話として。
世界最強の通貨
余談だが、基軸通貨である米ドルに対して最強の通貨(高価な通貨)はスイスフラン…と思いきやクウェートディナール(KWD)だそうだ。中東のクウェートの通貨、ディナールである。
1 KWD = 3.26 USD(*2024年4月現在)
クウェートというと1990年のイラクのクウェート侵攻くらいしか知らないが、グーグルによるとクウェートは莫大な富、安定した経済基板、低い失業率、さらには非課税の国として有名だとのこと。
ちなみにスイスフランは7位、ユーロが8位、イギリスポンドが5位だった。
これは以外だった。
ちなみに最弱はジンバブエドルで、現在では通貨としての価値は完全に無いそうだ。1980年には1.00米ドル=0.68ジンバブエドルだったそうだ。
それではKWDを保有しようとはやはりならない。自分には親しみの無いマイナー通貨なだけに。