『ハイパーインフレーションと人々』
画像抽出:DALL・E2
いわゆるコロナショック時に納得のいくトレードが出来なかったのだが、その理由として曲がりなりにも投資活動を行う上で「心の準備と行動の想定」が出来ていなかったと反省した。
世界的パンデミックという状況に圧倒されて思考停止に陥り、下落していきそうな株価を前に打診的な売りポジすらも持てなかった。情けない話だ。
そうした反省から、思いつく限りの状況に対して想定をしておく事にした。今回は日本のハイパーインフレだ。
ハイパーインフレーションとは
過度に物価が上昇し通貨が信用を失い、物価上昇が止まらない状態のことをハイパーインフレーションと呼ぶ。具体的には国際会計基準では「3年間で累積のインフレ率が100%以上」となっている状態だそうである。
2023年11月現在、日本円は様々な通貨に対し安値を更新し続けている。対米ドルだと$1=150円前後、ユーロだと€1=160円前後。
日本円を他の通貨に頻繁に両替する必要がある海外住みの日本人、特に北米在住者や欧州在住者には溜まったものではないだろう。実際自分としてもたまったものではない。
ハイパーインフレは2000年代に入ってからはジンバブエ、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、アルゼンチン、トルコ等がハイパーインフレに陥った。アルゼンチンやトルコに至っては現在進行中のようだ。
ドイツや日本でも起こった
過去の事例で有名なものだと第一次世界大戦後のドイツだが、第二次大戦後の日本でも起こったとする人もいる。終戦直後の1945~1949頃がそうだったようで、1949年にはその4年前と比較して70倍程度までの物価上昇があったらしい。例えば100円の缶ジュースが7000円…? 想像が追いつかないレベルである。
「起こったとする人もいる」としたのは、4年で70倍ではハイパーインフレと呼ぶには上昇率が足りないと言う人もいるからだ。国際会計基準の「3年間で累積のインフレ率が100%以上」に足りていないからだそうだが、いずれにしてもただただ恐ろしい状況である。
その後、1950年から3年続いた朝鮮戦争によってもたらされた特需のおかげで日本経済は回復していったらしいが、そこへ至るまでにはGHQによって$1=¥360で固定されたり緊縮財政を行ったことによってデフレ不況となるなど、敗戦後のごたごたは自分のような世代の人間には想像もつかないが、生きるだけでもさぞかし大変だっただろうことは想像に難くない。自分の祖父母はどちら側も既に他界しているが、そうした時代を生き延びてきた事を思うと改めてより強い尊敬の念を抱かされる。
ハイパーインフレが日本で起きる可能性
昨今の日本円の「暴落」と呼んで良いような下落で、日本円のハイパーインフレ化を懸念する声がより聞こえるようになってきた気がする。
とは言え市場規模やシステムから考えても日本ではハイパーインフレは起きないという考え方が一般的なようだ。元JPモルガンの某氏のように警笛を鳴らし続けている人もいるが、日本のメディアやSNSから受ける印象は切羽詰まったものではない。日本の財政状況に関しては一様にネガティブトーンではあるが。
ただし市場に絶対はあり得ない。
万が一の事態に備えるため、「心理的準備と行動の想定」はあらゆるシチュエーションに対して行っておくべきで、日本のハイパーインフレも例外ではない。
ハイパーインフレへの備え
…とは言え、出来ることはそう多くはないし、投資家であれば通常時の資産構成比率をあまりいじる必要はないという人もいるのではないか。
即ち日本円以外の外貨、金、また人によってはビットコインや不動産へ日本円を変えておく、という事につきる。
そこへ日本株を含める人もいるようだが、個人的にはそれは微妙だと思っている。というのはいざハイパーインフレなんぞが起こったとしたら当該国の経済はガタガタになるだろうし、そんな中で企業がまともに活動できるはずがなく、全体的には株価もそうとう下げそうだからだ。
この点は中国の台湾進攻などの紛争・戦争の際の対策とは異なる部分だ。
それを言い出すと日本と取引のある国にも影響は当然出るはずで、かなり世界的な規模の「ジャパンショック」とでも後に呼ばれるような事態になることも考えられる。
ジャパンショックへの備え
そうなった場合にはやはり米国債券に頼ることになると想定するが、場合によっては金やビットコインも対象になるのではないか。要は株式市場からいち早く逃げることである。
為替についてはどのペアも触らない方が身のためと慄くほどの荒れたチャートが続くと思われるがどうだろうか。ドル円やクロス円に関しては取引停止だろうし、出来たとしても今のトルコリラのようにスプレッドがえげつないものになるとか。
ハイパーインフレが起こった時の政府の対応
過去の例を参照すると、1945~1949年の日本でハイパーインフレ(的なもの)が起きた際には、「預金封鎖」、「新円切替」、「財産税」の徴収が行われたらしい。
1946年2月16日に、3月3日から従来の紙幣の流通を停止し新紙幣を発行するという発表があり、それに際して1世帯あたり月々500円までしか引き出せないようにし(つまり預金封鎖)、それを引き出す時に新円に切り替えていったという事である。
なお、5円以上の日本銀行券(紙幣)は強制的に金融機関に入れさせられたらしい。
「財産税」に関しては25〜90%の累進課税で、現預金、債券、不動産といった資産に適応された。つまり金持ちはほとんどの資産を没収される形となった。
税金で金欠を補い、流通する貨幣量を減らすことでインフレを退治しようとしたという事だ。
それでもそのハイパーインフレ的なものは収まらなかったので、前述した固定相場制の導入と緊縮財政(いわゆるドッジ・ライン)でインフレ抑制に成功した、というのが一連の流れである。
今と昔は本当に違うのか
何んとも荒々しい時代だったんだなあと感じるが、こんなこと、あるいはこれと似たような事が現在では本当に起こらないのか、というのが我々一般人が知りたい部分である。
政府による国民からの「かつあげ」とも言えるような政策は、普通に考えれば想像し辛い。
国家存亡のためになりふり構っていられないような未曾有の状況が日本に訪れるという想像はやはりちょっと考え難い。あるとすれば自然災害や核戦争といったものだろうが、預金封鎖を心配する規模のものとなると流石にその状況が上手く頭に描けない。
それでも万が一、いや億が一の時のためにほんの少しでも国外に資産を逃がしておくとか、国に没収されなさそうなモノに換えておくといった事をやっておいても良いような国際情勢、時代になってきたと感じているのは自分だけではないと思う。
国に没収されなさそうで資産としての価値を担保できそうなものとなると貴金属類やジュエリー、ワイン、時計といったあたりだろうか。
ポケカ(ポケットモンスターカード)までいけばその可能性はより高そうではあるが、そうであっても実際に行動する強者はほとんどいないだろう。
何しろ…「日本のハイパーインフレ後の預金封鎖・財産税に備えてポケカ購入」という何とも形容のし難い行動になってしまう。それに投資できるだけの知識もないのだからリスキーだ。
これは既にポケカ投資をしている人をディスっている訳では全くない事だけは念のため付け加えておく。
まとめると、
1.
日本でハイパーインフレ
↓
日本円を外貨(米ドル、ユーロ)、金等に両替
2.
ジャパンショック(世界的恐慌)
↓
米国債券購入
3.
預金封鎖・財産税
↓
貴金属類、ジュエリー、ワイン、時計、ポケカ等のモノ購入
これらをその雰囲気を察して事前に行う必要がある。至難の業だ。直前になってからではほぼ無理だろう。
投資家であれば1と2には既にかなり備えられているという人もいそうだが、3への準備が出来ているのは余剰資金が十分にある富裕層くらいだろう。ポケカは別にして。
いずれにせよ、少なくとも投資に関しては「あらゆる可能性の想定とその準備」がマストな時代になってきたのは間違いのないところである。