1. その他

投資想定シリーズその7 – 世界大恐慌が起きた際の投資先を想定してみた

"Great depression era" David Hockney tasted painting

『世界大恐慌時代』
画像抽出:DALL・E2

コロナ禍を理由に株式市場が暴落していた時、自身が初めて経験するパンデミックという状況に圧倒されて買い向かうどころか打診的な売りポジすらも持てなかった。情けない話である。

それはいつ何時、どのような状況でも少なくとも思考停止状態にはならないための「心の準備と行動の想定」という投資活動を行う上で基本かつ重要な心構えが欠けていたからだと反省した。

その反省から、思いつく限りの状況に対して想定をしておく事にしたのが投資想定シリーズである。今回は世界大恐慌だ。

1929年の世界大恐慌

“1929年10月24日(木曜日)、ニューヨーク証券取引所では株価の大暴落をみた。 後に、「暗黒の木曜日」と呼ばれることになるこの事件は、未曾有の経済危機となる大恐慌の始まりを告げるものであった。”
(引用:https://www.hit-u.ac.jp/hq-mag/research_issues/276_20180308

米株(米ダウ工業株30種平均)の下落率89%、その後全戻しまで25年、という数ある歴史上の暴落の中でもその規模は別格、桁違いだ。

なお、その要因としては下記が挙げられるそうだ:

“・1920年代の戦後好況の中で資本・設備への過剰な投機が行われ「生産過剰」に陥った。
・農産物も過剰生産のために価格の下落する農業不況が起こり、農家収入が激減、国内の有効需要が低下した。
・各国とも自国産業の保護のため、高関税政策(保護貿易主義)に転換したので、世界市場の拡大も阻止されていた。
・同時にアジアの民族資本の成長、ソ連社会主義圏の成立などで、アメリカの市場が縮小していた。
・企業が生産を減少させたため失業者が増大、さらにそのため購買力は減退し、さらなる生産減少をもたらすという悪循環に陥った。”
(引用:https://www.y-history.net/appendix/wh1504-001.html

高値更新まで25年

それにしても個人的にどうしても解せないのが、全戻しまでに要した時間である。25年て…

米株価の歴史チャート
ダウ工業株30種平均(DJIA)の月次値 1920-1955
(参照:www.statista.com

だが少し調べてみると、株式配当を含めて計算すると15年程度で全戻しは達成していたらしい*。が、それでも15年だ。
(*引用:https://www.nikkei.com/article/DGXBZO04570930U0A320C1000000/

他のメジャーな株価でこんなに長い時間を要したケースってあるのかと考えてみたが、考えるまでもなくごく身近にあった。日経225だ。

日経225も数十年停滞

2024年2月、1989年12月29日の3万8915円をようやく超えた。およそ35年ぶりのことだ。

日経225の歴史的チャート
(引用:https://www.investing.com/indices/japan-ni225-chart

日経の場合、大底(2番底)は2009年頃だったと言えそうだ。そして典型的なカップ型チャートである。ここまで来たらハンドルまで形成してくれると投資し易くなるのだが。

大恐慌時はチャートを見る限り1932から33年頃が大底。つまりは1929年から3~4年かけて一気に下げまくり、文字通り完全な焼野原となったと想像できる。

数年も続く90%近い下げって自分は経験したことが無いしこれはただの想像だが、相場は回復不可能なほど崩壊するのでないかといった恐怖を抱いた市場参加者もいたのではないだろうか。それほどのインパクトに見える。

ただ、そこから全体的には回復基調だったとチャートからは読み取れる。最高値更新は25年後だったかもしれないが、年足チャートを見る限りは投資ができる環境だ。…あくまで100年近くたった今サラッとチャートを見ただけの感想としてだが。

世界大恐慌時の相場って完全凪で死んだようなチャートを想像していただけに意外だった。

チャートは凪が最悪

39000円程度が8000円程度まで下落したここ数十年の日本の状況(こちらはその空気感を自身が生活の中で体験済みだ)の方も、チャート的にはバブル崩壊後だろうが投資活動は可能だったことになる。

最も、2009年~2013年などは日経に投資をしていたとしたら永遠に続きそうな凪相場でガッツリと萎えただろうが。

米株の方は第二次大戦への懸念からか、1939年のドイツのポーランド侵攻から1942年にかけて40%ほど下落したりと、少なくとも月足を見る限りほぼ全ての期間上下動している。

短期トレードもやる自分としては下にでも良いから動いてくれさえすれば良い。とにかく凪が最悪である。

ちなみに、世界大恐慌と日本のバブル崩壊を同列にならべている訳ではないが、世界大恐慌時の投資想定とは暴落後に数十年続く停滞ムードの際の投資想定とも言える訳で、チャート的には少し共通する部分はあると思う。

世界大恐慌時の為替

米ドルと英ポンドの歴史的ペアチャート
(出典:https://www.exchangerates.org.uk/articles/1325/the-200-year-pound-to-dollar-exchange-rate-history-from-5-in-1800s-to-todays.html

時代背景的に米ドルと英ポンドが良さそうなので見てみると、どちらかと言うとポンドが売られる傾向にあったようだ。

こちらのサイト(https://www.measuringworth.com/datasets/exchangepound/result.php)で1929年以降を見ても同様。

大英帝国の没落と米国の勃興を表しているようなチャートだが、肝心の世界大恐慌の影響があったのかはいまいちよく分からない。

日本円も同様に恐慌の影響はよく分からないが、金本位制の採用、離脱などが理由でレートが大きく動いている。米国株価が大恐慌での暴落で底を打った頃だ。

米ドルと英ポンドの対日本円チャート(1921~1940)
(出典:https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kk21-2-5.pdf

記事によると1920年半ばに第一次大戦中に金本位制を停止していた欧米主要国が復帰。日本も1930年1月に復帰。だが英国の金本位制停止で円売り圧力が強まり、金本位制復帰から2年後の1931年12月に金輸出再禁止措置。これで日本は実質的に金本位制から離脱。
為替レートは金本位制時代の平価、49.845ドルから急落。1932年11月には20ドル割れまで下げたそうだ。

このように100年前の為替環境が今とかなり違うのは明白で当時の値動きを参考にできるのかという疑問はあるが、気になったので調べてみた。

2024年以降の安全通貨は米ドルとスイスフランだろう。現代により近い年に起こった○○ショック時の通貨レートを今シリーズでは調べてきたが、有事の米ドル、スイスフランという構図は基本的には揺らいでいない。

ここ数年で安全通貨という地位から転落したのは日本円で、特に有事には円の保有量には気を配る必要がある。持ち過ぎないように。

大暴落時のトレード

1930年頃の投資環境が判らないし、判る必要も自分には無さそうなので、現在の投資環境で大暴落が起きた場合の行動を考える。

考えると言っても、考えるべきことはそう多くない。その暴落がどんな理由であれ取れる行動は限られる。

まずは株だけでなくコモディティや特に国債との分散投資。

自分の場合は
株4、コモディティ/クリプト3、国債/キャッシュ3

株3、コモディティ/クリプト2、国債/キャッシュ5
にする。
株とコモディティを10%づつ売り、その20%をそのままキャッシュで持つか国債を買う。

キャッシュの部分はスイスフランを中心に米ドル、ユーロなど複数通貨にする。

短期売買(裁量トレード)をやるのであれば打診売りを入れ、損切は20ピップス程度、20ピップス利益が出た段階でストップラインを建値に動かし放置。それを繰り返す。

誰にもどこまで落ちるか判らないのが暴落だ。ただ、米株は過去のその他の暴落事例から-30%を超えたあたりで打診買い開始。50%を超えるようであれば本格的な買い場を探す。

…という投資想定だが、言うまでもなく実際に行動するとなるとすんなりとは行かない。様々な理由で。

想定通りには動けない

そもそも、暴落時にポートフォリオを弄るということは、値動きがドカンと出たものを追随買い(売り)をすることになる。チャートを見ても上(下)に立った火柱のせいで空白が目立ち、既に遅すぎたんじゃないかという不安と戦うことになる。

デイトレも欲と恐怖との闘いになる。マイルールを破っても良い時なんじゃないかと考え始める。

それに加えて例えばX等のSNS上にしろニュースにしろウソや煽りをタップリ含んだ様々な情報が飛び交いそれを目にする。

そういうメンタルを改善・克服するものは何かと言えば「経験」。結局はそれのみだろう。要は慣れろということだ。言わずもがなで申し訳ない話だが。

普段から分散、積立も

前述の日経の記事(https://www.nikkei.com/article/DGXBZO04570930U0A320C1000000/ *in Japanese)には、分散投資していた場合の損益も書かれていた。

記事によると、配当無しで25年、配当有りで15年回復に要した大恐慌時であっても、株と債券を50%づつの場合は約6年2ヶ月で投資元本を回復できたそうだ。

更にはインデックス投資だった場合は3年9ヶ月で投資収益はプラスになる計算だそうだ。

この場合のインデックス投資は、1929年8月(株価ピーク)からドルコスト平均法で積み立てた場合との事だ。

25年や15年とはえらい違いである。

世界大恐慌とビットコイン

世界大恐慌に関する記事やチャートを眺めていて、おかしな事に類似した投資経験を自分もしたことがあると感じていたのだが、それはビットコインだった。

もちろんその規模も社会的なインパクトもこれらは比べるべくも無いが、2017年頃にBTC取引を始めた頃の狂喜乱舞とその後の暴落の阿鼻叫喚ははっきりと憶えている。

そしてそれと同時にウジャウジャと湧いてきた詐欺師や詐欺投資案件も。目も眩むほどの数のシットコインとICO。

期待を込めて買ったものがとんでもない勢いで価値を失っていくあの感じは何物にも形容しがたかった。

まとめ

世界大恐慌時は一時4人に1人が失業したと言われる。失業率25%だ。1929年から3年でGDPが-15%。働いていても給料が大幅カット。

いわゆるグレートリセットが現代に起こる可能性は知る由もないが、絶対無いとは言い切れないので備えておく。メンタルだけでも。

備え方としては、

・普段から分散、積立。
・株のみの保有禁止。国債も。
・為替は米ドル、スイスフラン中心
・米株インデックスを打診売り
・米株-30~50%は打診買いゾーン
・-50%越えで本格的な買い場探し

これらは-90%程度までの下落の可能性も意識しながら行動する必要がある。

そして株価が底を打ったと思っ後、凪相場になってグズグズしていてもそれが普通だと考える。あまりにも惨く棄損した相場は年単位、それも複数年に渡りそうなる可能性だって大いにある。だが相場は必ず回復しまた動き出す。欲と恐怖にまみれた人間が存在する以上。

ついては、備えと忍耐が投資家にとって最重要要素だという意見には自分も大いに賛成である。そして世界恐慌のような長期的停滞期間にこそその技量が問われるのだと思う。

チャート的には長期停滞の代表のようなここ数十年の日経の取引で、日本の多くの個人投資家が億越えしているのを良い例として自分も精進していきたい。

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