『自動売買ソフト』
画像抽出:DALL・E2
“2000年のゴールドマン・サックスのニューヨーク本社では600人ものトレーダーが大口顧客の注文に応じて株式を売買していたそうですが、ゴールドマン・サックスのCFO(最高財務責任者)に就任予定のマーティ・チャベス氏は、「2017年現在で本社に残っているトレーダーはわずか2人です。空いた席を埋めているのは、200人のコンピューターエンジニアによって運用されている『自動株取引プログラム』です」と、ハーバード大学の応用計算科学研究所で開催された2017 CSE Symposiumで説明しました。”
(引用元:https://gigazine.net/news/20170208-goldman-sachs-automation/)
この引用は2017年の状況についてだが、2024年現在では当時よりも更に進化した技術によって世界的にトレードの機械化はますます進んでいるのは間違いないだろう。
「Flash boys」(https://en.wikipedia.org/wiki/Flash_Boys)という、一秒間に一万回トレードする高速取引(HFT: high-frequency trading)についての本を読んだ時も感心したが、その次の段階として異次元の量の学習を休みなく行えるAIが投資にも活用されだすのは時間の問題だろう。
…というか2024年現在既に活用されているか、少なくとも実験のような事はどんどん行われているはずだ。
いずれにせよ、まずは人間によるマニュアル・トレードは将来的にもあり得るものなのか考えてみたい。
自分以外の何かを頼ったトレード
このページ(https://inv.jp/uncategorized/o003/)にも書いたが、FXを始めて間もないころにEA(Expart advisor)を使ってみていた時期がある。
EAとは簡単に言うと自動売買ソフトだ。
始めた頃というと今(2024年現在)から10年以上前のことなので、現在のEA市場がどういうことになっているのかは判らない。
まずトレード成績が芳しくなかったこと、そしてそれを上手く使いこなすにはパラメータの設定のテスト等の検証が必要だと考えたことを理由に止めた。
そこに労力と時間を費やすならトレード自体を自分で学んだ方が手っ取り早いと思った訳だ。
EAの進化版がAIトレード
AIを使ったトレードとはつまるところ自動売買ソフトの進化版に過ぎない…と言って差し支えないのかどうか知らないが、系譜としてはそうなるだろう。
自作の自動売買ソフトを作って、つまり自分でコードを書いてそれでたんまりと儲けているトレーダーを自分は知らないが、GSなどの大手金融機関が実際に機械トレードで儲けているのだから、そういう人は間違いなく存在するのだろう。
AIトレードとは、つまりは彼らの代わりにAIがコードを書いてくれる、ということになるようだ。少なくとも現状では。
将来的にはそれに加えてAIが24時間相場を監視し自分の口座を運用してくれる、という未来は有りえそうだ。
今でもすでにロボアドバイザーと呼ばれる資産運用サービスがあるのだから、AIの進化と共にそういったサービスの質も上がっていきそうではある。
流れとして考えられる個人トレーダーの未来像
そうすると想像できる未来としては、資産運用サービスに任せておくだけで自動で資産が増やせるため(というふうに広く一般に認知されるため)、トレードを自分でマニュアルでやるような個人トレーダーは欲の皮の突っ張った、リスクを冒してでも直ぐに金持ちになりたい拝金主義者、あるいはギャンブラーと同類に見られる、といった感じか。
…いや、今既にそう思われてるか。個人投資家のイメージなんて現状でもせいぜいこんな感じなのかもしれない。
それがAIの投資活動への台頭によって更に悪化し「放っておけば勝手に増えていくものを、わざわざ手動でイジくりたがる酔狂な物好き」となる。ちょうどオートマ車が大多数の時代にわざわざマニュアル車を運転したがるマニアのように。
それでも聖杯を探してはならない
まぁ個人トレーダーの世間的印象はどうでも良いとして、流れとしてはそうなるだろうなとは感じつつも、その考えには違和感が付きまとう。
自分のスキル以外の何かに頼ってトレードする、という行為自体に反射的にメンタルブロックがかかってしまう自分のようなタイプのトレーダーは特に違和感を持つはずだ。「そんな甘かねーよ」と。
投資は半数以上が負ける、というのがまるでこの世の普遍の原理であるかのように無条件に信じてきたものからすると、AIが資産運用を手掛けるようになったとしても投資リスクは減っていないと考える。人間がAIをコントロールする以上。
つまりは例えば大暴落時、自分の金、それも安くないAIサービスに手数料を払いながら少しづつ積み上げてきた金が見る見るうちに尋常ではない速さで減っていっている時、焦って電源を引っこ抜かないか?という話である。
「電源を引っこ抜く」は既に古い表現なのかもしれないが、そういう時には多くのユーザーがAIサービスを止めてしまうのではないか。手動で。
人間の強欲や恐怖といった感情で動いている相場にいくら機械が入ってこようと、感情を持った人間がそれらの上に立って指揮している以上は結局のところ本質は変わらないということだ。
いわば相場はそういう不完全なもので、対象が不完全である以上、これまた不完全な指揮者がそれに完璧に対応する術もない訳だ。
聖杯、つまり必勝法など存在しないのと同じで、AIの利用もそれにはなり得ない。
マニュアルで地道にトレード経験を積むのが唯一最善
ということで、自身の立場上、自分に都合が良い結論に無理やり導いた感はいなめないが、少なくとも現状ではそう考えている。
仮にAIにトレードを任せるとしても、その機械がやっていることが理解できない場合、損切はどうやって設定するのだろう。
そしてその設定値に到達した時に、はたしてスッパリとそのAIの利用を止められるのか?
トレードがAIを監督するだけの作業だとしても、監督業って時にとても大変で、それがどの分野であろうと知識と経験を要するものだろうし、何よりも人によって向き不向きがあるはになり、
そう考えていくとやはり直接的に行うトレードを勉強し実践していくのが、株といったオンライン上で完結できる投資には最善の策で、おそらく唯一の道だ。
…誤解のないようにしておきたいのは、株式インデックス投資といったような、手法が既に確立されていて低利率を目標とした投資について書いているのでは全くない。そういったものはそれこそAIに任せておけば良いだろう。
というか既に自動積立サービスは多数存在することだし、月に一回ドルコスト平均法で売買を行うコードを書くのはちょっとプログラミング言語を知っていれば簡単にできそうだ。AIをその程度のことにわざわざ使うのもどうかと思うレベルの利用方法かもしれないが。
結論
個人トレーダーもAIを使った機械トレードをするべきなのか、という問いにはインデックス投資はイエス、裁量投資はノーだと答える。
そしてAIを操っているのが人間であればという前提で、人間によるマニュアル・トレードは将来的にもあり得ると断言したい。
ついでに
…ちなみに、AIを操るのもAIになり、その上に人間がいない状況下でまだ相場が機能している状況ってありえないはずだ。
シンクロ機能を持っているが故に目的や方法、意思決定を完璧に共有できる彼らにとって株式相場といったような回りくどいシステムを好むとは思えない。
AIが意思を持ち、種(?)の発展を望むのであれば、人気投票的な要素のある方法が採用される可能性は無いだろう。何しろ全は個、個は全な訳だから。
相場というのは人間という、地域も考え方も個々がバラバラの烏合の衆の、烏合の衆による、烏合の衆のためのシステムであって、だからそのドラマ性が尽きることはないのだと思う。
どれだけ機械が幅を利かせてこようが相場の根幹にあるものは欲望や恐怖といった極めて人間臭いもので、その部分を完全に取り除くということは相場という概念そのものの破壊、と言えるのではないだろうか。
何だかAI批判のような形になってしまったが、個人的にはそんな事は全く無く、むしろ色々な業種や場面でガンガン活躍していってほしいと考えている、むしろ未来志向型の人間である。
ここで言っているのはただ単純に、相場から完全に人間が排除され機械だけになる未来はあり得ないという一点だけだ。
なお、上記はあくまで欲の皮の突っ張った、リスクを冒してでも直ぐに金持ちになりたい拝金主義者による恣意的なつぶやきである。